30 Jun 2005 胃腸疾患 その13
A型肝炎
 

A型肝炎

A型肝炎はA型肝炎ウイルス感染による疾患で、一過性の急性肝炎が起こり、治癒後に強い免疫が残されます。このウイルスは糞便中に排泄され、経口感染で伝播するため、患者の発生は衛生環境に影響されやすいわけです。A型肝炎は発展途上国で蔓延し、逆に感染の少ない状態が長期間継続すると免疫のない方が増加します。日本では50歳以下での抗体陽性者は極めて少ないのです。最近の日本では大規模な集団発生はみられませんが、飲食物を介した感染や、海外渡航者の感染がみられます。シンガポールも日本同様に衛生レベルが高い結果、国内での感染よりも、発展途上国との人的交流や食品輸入によりA型肝炎にかかる可能性が高くなっています。また、近年ではアジア諸国では都市部での集団発生が多くなっていて、1988年に中国上海市で発生した約30万例の大流行はいい例といえるでしょう。

ウイルス感染後、潜伏期は2〜6週間(平均4週間)であり、高熱、強い全身倦怠感などに続いて、肝機能障害(GPT・GOTが上昇する)が出現します。食欲不振、嘔吐などの消化器症状を伴いますが、典型的な例では黄疸、肝腫大、濃色尿、灰白色便などを認め1〜2ヵ月の経過の後に回復します。GOT・GPTの正常化に3〜6ヵ月を要する例や、正常化後に再上昇する例もありますが、基本的に慢性化せず、急性肝炎の形で治癒します。他のB型やC型ウイルス性肝炎と比較して、A型肝炎の症状の特徴は、発熱、頭痛、筋肉痛などの感冒様症状が強いことがあげられます。私のアフリカ(ケニア)勤務時、マラリヤや得体の知れないアフリカの風土病と誤診しそうになったことがあるのを記憶しております。しかし、臨床症状や肝機能障害の改善のスピードも早い印象が強く、肝機能検査では、他の急性肝炎の場合よりGOTやGPTなどの数値が高い傾向がありますが、正常化するまでの期間は最も短いといわれています。また、成人では小児に比べ、臨床症状も肝機能障害の程度も強い傾向があります。

治療は急性期には入院安静を原則とします。特にA型肝炎に対する特異的な治療法はありません。予防法はワクチン接種の一言に尽きます。接種後の抗体獲得率は99%以上との報告があるほどです。抗体保持期間は20年前後といわれていますが、これはA型肝炎ワクチンが開発されて20年ぐらいしかたっていないからで、実のところ、どれぐらい有効なのかわかっていないのが本当のようです。

永山 憲市

 

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