|
溶連菌感染症
溶連菌感染症とはA群溶血性レンサ球菌(溶連菌)によって引き起こされる急性咽頭炎や急性扁桃炎などの上気道炎、膿痂疹(とびひ)や蜂巣織炎などの皮膚炎や中耳炎の総称です。また、菌の直接の作用ではなく免疫学的機序を介して、リウマチ熱や急性糸球体腎炎などの合併症を起こすことが知られていて、用心が必要な感染症でもあります。今回は上記のような病気の中から一番頻度の多い溶連菌による咽頭炎・扁桃炎を溶連菌感染症の一例として述べます。
溶連菌感染症は温帯地域ではよくある感染症なのですが、一般的には熱帯地域ではまれな感染症と言われてきました。しかしシンガポールのように冷房があり、密閉性が高い、あるいは換気がうまくできない建築環境では、日本と同じく溶連菌感染症の患者さんが見られるように思います。溶連菌感染症はいずれの年齢でも起こり得ますが、学童期の小児に最も多く、3歳以下や成人では典型的な臨床像を呈する症例は少ないようです。この病気は通常患者との接触を介して感染するため、ヒトとヒトとの接触の機会が増加するときに起こりやすく、家庭、学校などの集団での感染も多いのです。感染性は急性期にもっとも強く、その後徐々に減弱します。急性期の感染率については兄弟姉妹での間が最も高率で、約25%と報告されています。
発症への潜伏期間は2〜5日です。突然の高熱(38.5℃以上)と全身倦怠感、強い咽頭痛によって発症し、しばしば嘔吐を伴います。咽頭壁は浮腫状で扁桃は赤く腫れ上がり、浸出液を伴います。治療にはペニシリン系抗生物質が第1選択薬ですが、アレルギーがある場合にはマクロライド系抗生物質が適応となります。いずれの薬剤もリウマチ熱、急性糸球体腎炎などの合併症予防のために、少なくとも10日間は確実に服用することが必要です。さらに急性糸球体腎炎の早期発見のために抗生物質治療後1ヶ月から2ヵ月の間は尿検査を2週間ごとに行う必要があります。予防としては、患者さんとの濃厚接触をさけることが最も重要で、うがい、手洗いなどの一般的な予防法も励行します。
幸いこの溶連菌感染症は適切な抗生剤治療が行われれば、ほとんどの場合24時間以内に他人への伝染を防げる程度に病原菌を抑制できることもあり、学校・幼稚園への登校登園については、流行阻止の目的というよりも患者さん本人の状態によって判断するべきです。
永山
憲市 |