22 Sep 2005 感染症 その14
腸チフス
 

腸チフス

今回はシンガポール国内ではあまり見られないのですが、一歩シンガポール国外に出て他の東南アジア・南アジア諸国にご出張、ご旅行された場合に危険にさらされやすく、かつ症状が激しく入院治療が原則必要な感染症(前書きが長くなりました)腸チフスについて示します。

この腸チフスはチフス菌によって引き起こされるのですが、名前どおりに腸だけで終わればいいものを、その後血流に乗って全身に菌がまわり菌血症を生じる厄介な病気なのです。

腸チフスの主要流行地域はインド、インドネシア、ネパール、バングラデシュ、フィリピン、タイ、カンボジアです。流行地での感染の多くは水や生ものを介した感染です。特に、生水、氷、フルーツ、生野菜、火が通っていない食べ物は避けるべきです。十分に火が通った料理、密栓された飲み物、皮をむいて食べるものは概ね安全だと思われるのですが・・・。実のところ食べ物云々というよりも、問題は残留塩素濃度が基準を満たさない水道水と管理・メインテナンスが不適切な水道システムに基づくチフス菌による水道水汚染なのです。したがって、水の安全が確かでない限り、飲み水や歯を磨く水は、煮沸したものか市販のミネラルウォーターを使用したほうが良いと考えられます。

腸チフスの主な症状は持続する高熱(38.5度以上)、悪寒戦慄と盲腸炎(虫垂炎)を疑わせるような右下腹部痛です。診断は血液検査でチフス菌に対する抗体を調べるのと血液中にチフス菌がいるかどうか調べる培養検査で行われます。お腹の検査としては腹部CT検査で右下腹部の盲腸辺りのリンパ節肥大を認めます。

治療は入院して抗生物質を点滴静脈内投与します。第1選択として有効性が明らかだったニューキノロン系抗菌薬ですが、近年、この薬が効きにくいチフス菌が認められるようになってきました。そのような場合は第3世代セフェム系抗生物質を使用するべきです。この抗生物質投与期間は再発防止のため比較的長く、入院して1週間から10日間点滴治療を行い、その後外来で内服薬に変更して1週間となっています。

予防法としては腸チフスワクチンがありますが、感染防御率が40〜60%と報告されています。したがってワクチンをすれば大丈夫というものではないと理解していただきたいのです。

永山 憲市

 

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