10 Oct 2005 医療コラム(Dr 永山) その18
鳥インフルエンザワクチンについて
 

鳥インフルエンザワクチンについて

今回は現在、世界的に大問題となっている鳥インフルエンザのワクチン開発についてお示しします。
米国国立アレルギー・感染症研究所の研究者はH5N1鳥インフルエンザワクチンの初期臨床治験で予備的な段階ではあるのですが、試験的ワクチンが健常成人に免疫をつけることができたと発表しています。今後、更なる治験が必要ではありますが、H5N1ウイルスに特異的なワクチンを開発することが可能であることが確認されたことになります。
現時点で、H5N1ウイルスは次のパンデミック(世界大流行)をおこす可能性がもっとも高いウイルスとされています。ワクチンはパンデミック・インフルエンザを予防する最も重要な対応策ですが、その開発製造には問題がたくさんあるようです。最大の問題は、このH5N1ウイルスが非常に強い病原性を有しているため、ウイルスを取り扱うことが非常に危険であること。このためウイルスを処理して、ワクチン製造のためのウイルス抗原を抽出することが困難なため、抗原の供給量が限定されて大量のワクチンを製造することができない可能性があるのです。さらなる問題は、現時点でのインフルエンザワクチン製造能力の90%が、世界人口の10%をしめるにすぎない日本、ヨーロッパおよび北米に集中している点です。現在の世界のインフルエンザワクチン製造能力(通常のワクチンで毎年3億回分)はパンデミック時に必要な世界のニーズを満たすには少なすぎるのです。また、これはすぐに増加させられるものでもありません。

インフルエンザ・パンデミックは、いったん広がりだすと地球上のすべての国々に数ヶ月のうちに広がることが予想されています。よって、パンデミックは、世界のワクチン接種および緊急時の治療策の点で大きな不平等をもたらすことが考えられます。過去の経験からみると、国内で製造能力のある国は国外への供給をオープンにする前にまず、国内へのワクチンと治療薬の供給を優先させるはずだからです。世界中のワクチンの製造能力は現在限られているために、パンデミックの始まる前にパンデミック用のワクチンを大量に製造することは必然的に、季節性の(普通のヒト)インフルエンザ用のワクチンの製造能力を減少させることにつながります。季節性のインフルエンザの流行による死亡者数は世界で毎年25万人から50万人と推定されています。したがって、季節性のインフルエンザに対応するワクチン製造能力もパンデミックインフルエンザへの準備とのバランスがとれたものでなくてはならないのですが、一旦パンデミックが始まると、すべてのワクチン製造者は通常の(季節性)インフルエンザワクチンの製造をやめて、パンデミック用のワクチンのみを製造することになってしまいかねません。

現在開発中の鳥インフルエンザ(H5N1)に対するワクチンは5年以内に出来上がるだろうと考えられています。

永山 憲市

 

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