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急性出血性結膜炎
最近、眼を真っ赤にされて来院される患者さんが目立ちます。このような場合の多くが、ウイルス性の急性出血性結膜炎と言われるものになっているようです。この急性出血性結膜炎は、主としてエンテロウイルス70とコクサッキーウイルスA24の2つのエンテロウイルスによってひきおこされる、激しい出血症状を伴う結膜炎です。両ウイルスともヒトからヒトへ直接接触感染を引き起こします。
急性出血性結膜炎は1960年代の終わりに突如としてヒト社会で爆発的大流行を起こしたのですが、臨床的にはそれまで経験されなかった全く新しい型の結膜炎と言われています。その拡大の規模と速さはインフルエンザに匹敵するものだったようです。また、その出現がアポロ11号の月面着陸とほぼ同時期であったため、アポロ病というニックネームで呼ばれました。これが急性出血性結膜炎の最初の流行です。流行はその後2〜3年の間にオーストラリ大陸を除くほぼ全世界に及んだのです。現在においても地球レベルでみれば、毎年両ウイルスによる急性出血性結膜炎は散発的には流行しており、時期的には、特別な季節性は認められず、年中患者さんを見ることになるのです。好発年齢は広範囲にわたるのですが、6〜7歳以下、特に1〜4歳に多く、ときに20〜30歳代にもやや多く見られます。
ウイルス学的には大部分のエンテロウイルスは最初小腸に感染するのが普通ですが、この2つのウイルスの場合、感染部位はもっぱら結膜のみのようなのです。さらに潜伏期が極めて短く、感染後24〜36時間で発症することが明らかになっていますが、なぜ結膜下に激しい出血を引き起こすのか、そのメカニズムはいまだに明らかにされていません。この結膜炎の症状は突然の強い目の痛み、異物感、羞明などで始まり、結膜の充血、特に結膜下出血を伴うことが多いのです。全身症状としては頭痛、発熱、呼吸器症状などがみられます。通常、約1週間で治癒します。
急性出血性結膜炎に対する治療法は特別なものはないのですが、細菌の二次感染を防ぐあるいは治療する目的で、抗生物質の点眼が用いられます。感染予防には流水下で手指を石鹸で十分に洗うこと、タオルなどの共用を避けることが重要であり、ウイルスで汚染した器具や物品の消毒には、煮沸と塩素剤(家庭用塩素系漂白剤など)が用いられます。
急性出血性結膜炎は学校において予防すべき伝染病に定められており、出席停止の基準として「病状により学校医その他の医師において伝染のおそれがないと認められるまで」とされています。
永山 憲市 |