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21 Jun 2007 歯科コラム その7(歯科医師 太田)        シンガポールの水道水とフッ化物のお話
 


 

今回は診療室で多くの方から質問をいただくシンガポールの水道水とフッ化物についてのお話です。

シンガポールの水道水には0.6ppmのフッ化物が含まれています。これは水1リットルに0.6mgのフッ化物が含まれている量です。大人の方で1日平均約1mgのフッ化物を摂取する濃度に調整されています。では、水道水からのフッ化物摂取にはどんな効果があるのでしょうか。ひとつめは、歯の形成期(乳歯は生後1.5ヶ月〜2.5ヶ月、永久歯は出生〜8歳)にフッ化物を全身的に取り入れることにより、歯のエナメル質の結晶性が高くなることです。簡単に言えば歯が作られている時期に水道水としてフッ化物を体内に取り入れることにより虫歯に強い歯になるということです。これによる虫歯の予防率は、永久歯で50〜65%、乳歯では40〜55%と言われています。この効果は歯の形成期に水道水などで全身的にフッ化物を摂取した場合に現れます。そして、水道水へのフッ化物添加のもうひとつの効果としては、歯の外側つまりお口の中の歯の周囲に微量のフッ化物を供給することで歯の再石灰化が促進されることがあります。簡単に言うと虫歯を作りにくいお口の環境になるということです。この効果はすべての年齢の人に現れます。虫歯に強い歯にする効果と、虫歯を作りにくくする効果が水道水に含まれるフッ化物にはあるのです。

さてこのフッ化物ですが、過剰摂取には弊害があります。ひとつは、歯のフッ素症といわれる、歯の表面のエナメル質が茶色や黄色になるなどの歯の外観上の異常です。これは長期間、継続して過剰にフッ化物を摂取することにより起こります。胎児のときに作られる乳歯では、胎盤で過剰なフッ化物がブロックされるため歯のフッ素症はおこりません。永久歯は、出生時から8歳頃までエナメル質が形成されているため歯のフッ素症をおこさないために、フッ化物の過剰摂取に注意が必要となります。アメリカ食品衛生局では、歯のフッ素症をおこさないために、一日の摂取上限は8歳までのお子さんは、体重1kg当たり0.10mgとしています。体重20kgのお子さんで1日2mgです。もうひとつ、フッ化物の過剰摂取の弊害として胃腸障害などの急性中毒症状があります。これは体重1kgあたり2mgのフッ化物を誤飲した場合に起こる可能性があります。水道水へのフッ化物はこのこのような弊害が起こらないように調整されています。そのほか、一般的なフッ化物の使用として、歯科でフッ化物の塗布があります。水道水や歯磨き粉と異なり、歯科の診療室で行うフッ化物の塗布では9000ppm[高濃度(フッ化物製剤ゲル1gに9mgのフッ化物が含まれている濃度)]のフッ化物を使用します。高濃度のフッ化物を使用しているため再石灰化およびフッ化物の歯の表面への取り込みが高いことが特徴です。使用するフッ化物の量は約0.8mg。フッ素塗布後に余分なフッ素をふき取りますので口腔内の残留フッ化物の量は0.8mg以下となりますので、安心して使える量となっています。また頻度の面からも歯のフッ素症の心配はないことが分かっています。また、フッ化物塗布のペーストを誤ってすべて飲み込んでしまった場合でも7.2mgです。体重10kgのお子さんで中毒が起こるフッ化物の量は20mgですので歯科でのフッ化物塗布で急性の中毒が起こる心配はありません。歯科におけるフッ化物塗布は、6か月に1回のフッ化物の塗布で約50%、2か月に一度で約70%の虫歯抑制の効果があると報告されています。

太田 瑞穂
 

   
 

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