30 Oct 2003 感染症 その3
マラリア
 

マラリア

マラリアの病原体は原虫(寄生虫の一種)で、ヒトに疾患を起こすのは熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫、四日熱マラリア原虫の4種類です。熱帯熱マラリアは迅速かつ適切な対処をしないと、短期間で重症化あるいは死亡に至る危険があります(重症マラリア)。マラリアは東南アジアや南アジア、パプアニューギニアやソロモンなどのオセアニアでの発生が多く見られます。

マラリアの感染の仕組み
マラリア原虫は、媒介動物であるハマダラカの唾液腺に存在し、メスのハマダラカが産卵のためにヒトから吸血を行います。その際に唾液を注入するので、体内に原虫が侵入することができるわけです。血中に入ったマラリア原虫は45分程度で肝臓の細胞内に取り込まれて増殖し、肝臓細胞を破壊して血中に遊離されます。その後は赤血球に侵入し、増殖して赤血球を破壊し血液中に放出され、また新たな赤血球に侵入して上記のサイクルを繰り返します。三日熱マラリア原虫と卵形マラリア原虫の場合には、肝細胞内で直ちに増殖を開始することなくしばらく潜んでしまう休眠原虫も形成され、これが後になって増殖を開始して血中に放出されると再発を生ずることになります。

マラリアの病態
流行地で生まれ育ち、何度もマラリアにかかって、多少の免疫を得ている者(semi−immune)では発熱などの症状が軽度かみられないこともあるが、日本人のように流行地に住んでいない者では免疫が得られず(non−immune)、発熱は必発です。発熱には殆ど悪寒を伴います。発熱にともない、倦怠感、頭痛、筋肉痛、関節痛などがみられることも多く、時には発熱以外に腹部症状すなわち悪心・嘔吐、下痢、腹痛や、咳嗽がみられることもあります。熱帯熱マラリアで重症化すると脳症、腎症、肺水腫、出血傾向、重症貧血などの種々の合併症を生じ生命の危険にさらされることもあります。

マラリアの治療法
三日熱マラリア、卵形マラリア、四日熱マラリアでの急性期治療としてはクロロキン(古くから使用される抗マラリア薬で流行地ではスーパーマーケットでも売られています。)が有効です。三日熱マラリアと卵形マラリアの場合、急性期治療が成功した後にプリマキンというお薬を使用して肝臓に潜む休眠原虫を殺滅する根治療法を行うと再発がありません。熱帯熱マラリアではクロロキン耐性(クロロキンが効きにくい性質)が進行しているので、クロロキン以外の薬剤、メフロキンを用いるべきです。しかし、タイ・カンボジアあるいはタイ・ミャンマーなどの国境地帯での感染の場合、メフロキン耐性が増えていることから注意が必要です。

マラリアの予防
予防の三原則は、1)蚊にさされないようにすること、2)薬物予防(予防的にクロロキンを服用すること)、3)スタンバイ治療(マラリアが疑われるときに自らの判断でメフロキン等の抗マラリア薬を服用すること)ですが、2)と3)は状況を十分に検討して、抗マラリア薬の副作用を上回るメリットがあると判断される場合に行う、いわばオプションと考えるべきものです。私見(ケニア、タイでの医療従事経験から)としてはマラリア流行地域に入る1週間前からクロロキン予防内服を行い、さらにスタンバイ治療薬として メフロキンを携行し発熱等のマラリア様症状が出た時に服用するというのが最良の方法と考えます。もちろん、薬物服用に関しては医師と必ず相談していただく必要があります。

永山憲市

 

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