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風邪の場合の抗生物質について
感染症の原因には主にウイルス感染と細菌感染の2つがあります。抗生物質とはそのうちの細菌をやっつける薬のことを言います。菌によって有効な抗生物質は異なります。抗生物質は、熱の原因が細菌感染で、飲んだ抗生物質がその細菌に有効なときに限って効果を発揮します。抗生物質はウイルスには効きませんので、ウイルスが原因である風邪の際に服用しても効果はありません。ただし細菌感染を合併した場合には抗生物質の投与が必要です。
風邪の場合はほとんどがウイルス感染ですから、いまの医学でできることは、咳や鼻水、熱などを和らげる薬を服用する対症療法だけで、ウイルスを退治して根本的に風邪をなおす方法はありません。
ではなぜ抗生物質を使うのでしょうか。第一に、ウイルス感染か細菌感染かは診断がつかないことが多いからです。熱が出て細菌感染も否定できない場合には使います。みずぼうそう、風疹、手足口病など明らかにウイルス感染である場合、抗生物質は使うべきではありません。
第二には、しばしば細菌感染を合併するので、その予防にという意見が日本ではいわれています。ちなみに欧米では予防効果はないということが大規模研究で明らかになっており、抗生物質は使うべきではないという考えが一般的です。日本では有効性を証明するデータは無いのに、なぜかガイドラインにも盛り込まれています。日本が世界で有数の抗生物質消費大国であるのもわかるでしょう。これは次にお話しする第三の理由によるところもあるようです。
第三は、熱がある時に抗生物質を医者が出さないと、説明しても納得しない患者さんがいるからです。このような理由で薬を出すべきではないとお叱りを受けるかも知れません。実際医学的には正しくないということに議論の予知はなく、できることなら出したくないのです。しかし、医療としてみた場合、それで患者さんが不安感から解消されるなら、安心感を得るメリットがあるのなら、そして副作用など大きな問題がないのなら、時にそういった方法もあり得ると思います。この場合の医師の方便として第二の理由が利用されるのです。
熱が続いたりして、ウイルスによるものか細菌によるものか区別する必要があるときには、検査で確認します。白血球の数や増えている白血球の種類、CRPという炎症反応をみる検査などで、細菌感染かウイルス感染かをおおまかに区別することができます。ただし、血液検査も万能ではありません。
よく患者さんが「抗生物質をもらったら風邪が1日で治った」とおっしゃいますが、実はその多くは抗生物質を飲まなくても1日で治った可能性が高いのです。
細菌感染治療は新しい抗生物質の開発と、薬剤耐性菌(抗生物質が効かない菌)の出現とのせめぎ合いです。新薬の開発と同じ速さで、従来の抗生物質が無効になって消え去っています。薬剤耐性菌を生み出さないためにも、現代の医者には、必要のない抗生物質の使用は極力避ける努力が求められています。そこには患者さんひとりひとりの、病気と薬に対する正しい理解と協力も同時に必要だと思います。
大西 洋一 |