08 May 2003 医療コラム(Dr 永山) その1
SARSトピックス 現状と今後の予想
 

SARSトピックス 現状と今後の予想

1.SARSの予防法について

SARSの感染力;

患者の咳、くしゃみにより約3m拡散する。
乾燥した環境では約3時間生存し、湿った状況では2日前後生存する。
唾液、痰、鼻汁、便中に排泄される。

以上から、空気感染、飛沫感染、接触感染の3つの経路の全てを介する可能性が高い。

 

SARSの感染経路;

空気感染:トイレ、エレベーター等の密室、飛行機等の乗り物など。
飛沫感染:患者との密接な接触(医療従事者、患者の家族・友人)。
接触感染:ドアノブ、エレベーターのボタン、トイレの便座、タオル、衣服。

感染力を有する状態とは?
潜伏期間中はコロナウイルスを排出していない可能性が高い。
発熱している状態の発病患者が痰などにウイルスを排出している。
咳、くしゃみ、鼻水だけで発熱していない場合はSARS患者とは考えにくい。

 

予防方法;

外出中と外出後のうがいの励行。 → 空気感染・飛沫感染
外出中、外出後と用便後の石鹸を用いた手洗いの励行。 → 接触感染
使い捨て紙タオル、各人別のタオルを利用する。 → 接触感染
外出後には帰宅してから衣服を変える。 → 飛沫感染・接触感染
勤務先、自宅での消毒には塩素系剤(キッチンブリーチ)を100倍希釈で利用する。乾燥後、清潔な布で拭く。 → 接触感染

マスクの使用は患者が身近にいる環境あるいは自身が発熱した場合に用いる。
日常生活上の予防法として最も有効なものは石鹸を用いた手洗いと衣服の交換である。また、上記のような予防法はインフルエンザ等の他のウイルス感染症に対しても有効である。

 

2.病院でSARSに感染するのが心配 !? SARSフリーな病院

SARSウイルスの伝染を防ぎ、院内感染を予防し安全な病院内とするためラッフルズジャパニーズクリニック/ラッフルズホスピタルをはじめ全てのシンガポールの病院は下記のような対応を行っている。

SARS患者は全てタントクセン病院ヘ転送・入院し他の病院にはできる限り入院させない。ちなみにラッフルズホスピタルではSARS患者の入院例は現在までのところなし。

病院入口では出入りする全ての方を対象として体温測定と症状等についての質問表にお答えいただく。

発熱患者(SARS疑いの患者)は特別に設定された診察室で診察する。
医師・看護師を含めた全ての病院スタッフは毎日最低2回の体温測定を行う。もし37.5度以上の発熱がある場合は勤務してはならない。

このようなSARSの院内感染を防止する試みは成果を上げつつある。事実、4月中旬よりタントクセン病院では院内感染により発症したSARS患者はない。また、他の国立病院でも院内感染による新規発症患者が激減している。ただし、今後も長期にわたってシンガポールジェネラルホスピタルを発生源としたSARS院内感染患者が少数とはいえ発生する可能性が十分にある。

 

3.今後のSARS流行の予想

シンガポールにおいては、すでにSARS新規患者数は減少傾向に入っている。WHO(世界保健機関)も発表しているようにシンガポールではSARS流行のピークは通り越したと考えてよいだろう。また、今後も継続的に中国、香港、台湾からの輸入感染例を水際で防止し続けることが前提であるが、現在の状況から考えると5月中旬にはほぼ新規患者が出なくなり、遅くとも6月中旬に制圧宣言が可能なのではと予想する。しかし、残念なことに死者数の増加は止められない。なぜなら我々は有効な治療法を持ち合わせていないからである。現在、集中治療を受けているSARS患者は非常に厳しい状況にあるため、救命が困難な例も近い将来出てくる可能性が高い。

永山 憲市

 

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