26 Aug 2004 感染症 その8
日本脳炎
 

日本脳炎

今回は我々にとってあまりありがたくない名前のついた感染症についてお示しします。事実、私が某東南アジア国の大学病院で教えていたとき、失礼にも私に向かって、「日本脳炎は日本人が媒介しているらしいので、日本人はこの病院から早く出て行ってくれ」と叫んだ不勉強な現地医師がいたことを覚えております。その医師はイギリスの医学部出身で熱帯医学を良く分かっていないようでした。

日本脳炎はアジアで広く流行しており、毎年少なくとも5万人の患者が発生しています。患者のほとんどは子供と65歳以上の人です。日本では、戦前戦後患者が多くみられましたが、1954年から予防接種が開始され(1994年から定期接種として実施)、患者数は著しく減少しました。近年、韓国および中国でも患者数は減少していますが、その他のアジア諸国(フィリピンやベトナムなど)では増加しています。

日本脳炎ウイルスはブタの体内で増殖し、蚊によってブタからブタにウイルスが伝播します(ブタ→蚊→ブタの流行)。一方ヒトは、ブタからウイルス感染した蚊に刺されて感染します(ブタ→蚊→ヒト)。ヒトからヒトへの直接感染はありません。高温多湿な気候で、ブタなどを飼育し、蚊の発生しやすい水田のある地域に多く発生しています。温帯地域では夏期に、その他亜熱帯・熱帯地域では雨期に発生が多くなります。ウイルスの媒介蚊は、主にコガタアカイエカで、日本をはじめ多くのアジア諸国に生息しています。

蚊に刺されて感染すると、免疫のない場合約1000人に1人の割合で発病します。通常7〜10日の潜伏期間の後、突然、発熱が起こり、2〜3日で40度以上に達することがあります。初期症状では、頭痛、嘔気、嘔吐がみられ、次いで、意識障害、けいれん、異常行動、筋肉の緊張性抵抗などが現れます。発熱は7〜10日間続き、発病後7日前後で死亡することが多くみられます。患者の10%から25%が死亡し、20%から40%に精神障害や運動障害などの後遺症がみられ、完全に治癒するのは30%程度です。特異的治療法はなく、点滴などによる脳浮腫対策と痙攣予防のみです。

予防法はご存知のようにワクチン接種とデング熱と同じで蚊に刺されないこと。虫よけスプレーや蚊取り線香などを利用し、肌を露出しない服装を心がけましょう。特に蚊の発生が多い水田地帯やブタなど動物を飼育している地域では、防虫対策を忘れないで下さい。中国や韓国では、夏から秋に、インド北部やネパールなどでは6月から9月頃の雨期に、蚊の発生が多くなります。他の熱帯地域では、常時防虫対策を怠らないで下さい。

永山 憲市

 

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