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急性腹症5 大腸憩室

急性腹症とは、急激に発症した腹痛を伴う疾患の総称です。急性腹症と一口に言ってもさまざまな疾患が含まれますが、その中から、私がシンガポールに赴任してから経験したことのある疾患を中心に、ひとつずつピックアップしてお話ししていきたいと思います。
第5回目は、大腸憩室についてお話します。

・大腸憩室とは?
大腸壁に小さな袋状のへこみ(憩室=けいしつ)ができた状態のことです。
・症状は?
ほとんどの大腸憩室は無症状ですが、憩室部の血管が破けて出血する大腸憩室出血や、憩室内に細菌が感染して起こる大腸憩室炎と言った急性疾患の合併につながることがあります。大腸憩室出血の典型的な症状は痛みを伴わない血便です。
大腸憩室炎を合併した場合は腹痛および発熱、吐き気などの症状があらわれます。憩室炎により腸が破れてしまった場合(穿孔)は腹膜炎から敗血症やショックとなることがあります。
・診断と治療
無症状の大腸憩室は大腸内視鏡検査の際に偶然見つかることがほとんどです。症状がない場合、特に治療は行われません。大腸憩室出血が疑われた場合はまず大腸内視鏡検査が行われます。この際に出血点が明らかであればそのまま内視鏡的止血術を行います。内視鏡でうまく止血できない時には、出血源となっている動脈をつめてしまう治療や、場合によっては手術を行うことになります。ただ、自然に止血されることもあります。大腸憩室炎が疑われた場合は腹部CT検査や大腸の造影検査を行い、診断を確定します。診断が確定した後は、抗生剤の投与、食事の禁止、点滴による補液が治療の基本となります。症状が改善しない場合や穿孔した症例では手術が必要となることもあります。

大腸憩室の原因としては食物繊維の摂取不足や、便秘などによる腸管内圧の亢進が関与しているとされています。大腸憩室は年齢とともに増加する傾向があり、日本人では60歳以上の20%くらいに存在するとの説もあります。大腸憩室の対策のためにも、日頃から食物繊維の摂取を心掛け、便秘に注意することが大切です。

医師 堀部 大輔