医師コラム

さわやかな息
2016年9月14日

死について26

前回、日本における子どもの自殺がこの20年間で増加傾向にある話をしました。今回はその自殺の理由についてですが、既に自殺をした人にその理由は聞けませんから、本当のところは永遠にブラックボックスです。とはいえ、この現状を社会として放っておくわけにはいかないので、日本では内閣府・警視庁と文部科学省の二つの公的機関が調査し、毎年データを発表しています。どちらも調査の精度には限界がありますが、前者は遺書などの資料に基づいて、後者は自殺をした子どもの学校の管理職にその子の生前の状況を回答してもらうことで、自殺に至る要因の傾向を解析しています。
二つの機関のデータは類似し、概観すると、(1)学業(入試・進路・成績など)25%前後、(2)人間関係(友人・男女関係・いじめなど)20%前後、(3)健康(主に精神疾患)20%前後、(4)家族・家庭(親子・夫婦・経済状況など)15%前後となっています。
と、あたかも何か発見したような言い分ですが、子どものみならず我々を取り巻く世界をよく考えてみれば、これらのことで日常生活は成り立っているので、当然とも言えます。「学業不振・進路問題」は大人における「事業不振や失業」などと同じような位置付けであり、子どもも大人も、「行き場がない」「先が見えない」などの追い詰められた感覚に苦しむのは同じです。また、幾つかの要因が関係しているのが実情ではないでしょうか。
予想に反して「いじめ」は統計上は2%のみでした。ここで改めて着目したいのは、割合の過多でもなく、要因が何かでもなく、二進も三進もいかなくなる人間の思考の狭視化です。子どもであればなおさら、物事を多面的に捉えたり達観視したり流したりなどという経験値が低いですから、容易に思い詰めていく可能性はあります。小児科医としてできることは、彼らの視点を強引に変えるのではなく、その視点に自分も合わせながら、まずはそばにいることだと思っています。

医師 元田 玲奈