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死について27

前回示したように、日本の子どもの自殺統計の原因の中で、「いじめ」は2%のみでしたが、いじめが子どもの心身に及ぼす影響は決して無視できません。今回は直接「死」にフォーカスした内容ではありませんが、死の直前まで行った少年の話をさせていただきます。

私が子どもの心の相談医になるための研修を受けた時、担当したケースの話をしてくださった女性弁護士の講師がいました。その方は、東京弁護士会が設置した「子ども人権救済センター」の活動として、「子どもの人権110番」を担当され、交代で毎日子どもたちからの電話や面接相談に応じていました。彼女はある時、自殺未遂をした中学3年の少年から電話を受けます。内容は彼自身の相談ではなく、もう二度と同じような想いをする子どもがいなくなるための懇願でした。彼は幼い頃から受験勉強に励み、「親が用意してくれた道が自分の幸せにつながる道」と信じて、有名私立中学に合格。そこには、同じように受験勉強一筋で生きてきた少年たちが集まっていましたが、その多くが「親の前では良い子」という呪縛にかられたまま、自分のストレスをクラス内の「いじめ」で噴出させる状態でした。彼は最初いじめられる側でした。担任に相談しましたが、「『先生は“中立”だからね』という言葉で逃げられた」と彼は言っています。
喧嘩両成敗という言葉はありますが、いじめは対等な関係での喧嘩ではありません。「ひとりぼっちの被害者」と「複数の加害者」という上下関係における、弱者に対して圧倒的屈辱を与える行為です。この縦関係の中で先生が「中立」になると、被害者にとっては、先生からも加害者からも上から押し付けられることになります。「加害者側に先生が回った」と彼は思ったそうです。形上の仲直りで済んでも、先生に告げ口をしたことに対する復讐という二次被害が起こり、もう二度と先生に頼るまいと思った彼は、いじめる側に回ることでしか自分の身を守れなくなります。しかし、2学期のある日突然、今度はまた自分がいじめのターゲットになるのです。
この後彼がどうなっていくかは、次回に続きます。

医師 元田 玲奈