医師コラム

胃がんのはなし
2017年5月16日
疲れがたまると..
2017年5月30日

死について29

「いじめを苦に自殺未遂」をした少年の話を書いている最中に、また悲しいニュースが連日のように報道されています。当人でなければ分からない心的状態であったのだろう、ということしか私には分かりませんが。これまで連載してきたこの少年は、「自分と同じような想いで苦しんでいる子供たちの代弁者になりたい」との想いから、子どもの人権110番に電話をします。そして、電話の受話器を取ったのが、この話を私たちにしてくれた弁護士でした。彼女は彼の話を一心に聞きましたが、ただただ打ちのめされ、おろおろするだけで一言も言葉を返せなかったそうです。でも、彼は「僕の話をこんなに一生懸命聞いてくれる大人がいるとは思わなかったよ」と言い、逆に彼女を救い、彼女に「これからも子供たちの言葉を聴き続けよう!」という決意を与えました。私が彼女から聞いた彼の言葉の中で忘れられない一節があります。「『いじめられたくらいで死ぬな!』って大人はすぐに言うけれど、あのね、『死ぬ』のなんて簡単。『死ぬ』方が、いじめられている状態で生きているよりはるかに楽で、その線はすぐに越せちゃうんだよ。それほど、いじめられながら生きるっていうの
は、大変で辛くて苦しいんだよ。だから、僕たちの話をちゃんと聞かないで、たやすく『死ぬな』なんて言わないで!」ガツンッと頭を打たれたような気持ちでした。子供だからと言って彼らの言葉を甘く捉えるな、ということです。幼くても、彼らなりに真剣に言葉通り「死」と向き合って生きているのだということ、そのことを分かっていなかった自分を反省しました。この少年はさらに「二度と後輩たちがいじめで苦しまない学校にするために」と、教師と父兄全員の前で話をし、以降その学校では「いじめのない学校作り」の努力が続けられているそうです。彼らの方が我々大人より何倍も強いのかもしれません。

医師 元田 玲奈