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糖尿病の合併症

今日、日本の糖尿病の患者数は予備軍を含めると2210万人と推定されていますが、実際に治療を受けている糖尿病患者の数はその10分の1程度にすぎません。治療を受けている人の数が少ない理由として、糖尿病は初期段階で自覚症状がないために、放置されがちであることが考えられます。ここが糖尿病の盲点になっています。
血糖値の高い状態を長い間放置すると、体内の血管がおかされ、眼や腎臓、神経に障害が起こる、いわゆる「糖尿病性合併症」をきたすことになります。この「合併症が引き起こされること」が、糖尿病においてもっとも恐ろしい点なのです。
糖尿病の合併症には毛細血管レベルの細い血管が障害される細小血管障害と、太い血管が障害される大血管障害とに分けられます。細小血管障害は、毛細血管の病変から始まる病態で、糖尿病に特徴的な合併症です。代表的な例は、網膜症(失明の原因)、腎症(人工透析の原因)、神経障害で、この三者を糖尿病性三大合併症といいます。三大合併症は糖尿病発症から早くて5年で発症してくるといわれています。
これに対して大血管障害は動脈硬化に由来する合併症で、脳梗塞、脳卒中、心筋梗塞、足壊疽などを招くことになります。これらは糖尿病に特異的とはいえませんが、糖尿病自体が危険因子となり、他の危険因子(高血圧、高脂血症、肥満、喫煙など)と絡み合って、糖尿病の罹病経過とは無関係に発症してきます。
一旦合併症が生じてしまうと基本的には治療することはできず、最悪の場合、人工透析や失明、足切断に至ってしまうこともあります。糖尿病の早期発見と適切な治療(良好な血糖コントロール)により上記のような深刻な合併症を防ぐことができます。
定期的に検診を受け、糖尿病や予備軍を指摘された場合は、糖尿病専門医の適切な診断、治療を受けることが重要といえるでしょう。

医師 中澤 哲也