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糖尿病性腎症

今回は、糖尿病の三大合併症のひとつである糖尿病性腎症についてお話します。

腎臓は、身体の中でいらなくなった老廃物を含む血液をろ過して、老廃物を尿として体外に排出するとともに、きれいになった血液を体内に戻すという極めて重要な働きをしています。この血液をろ過する役割をしているのが、腎臓の糸球体と呼ばれる場所です。この糸球体は毛細血管の塊でできており、高血糖が長期間続くと、血管障害や膜に変化が起きてきて、ろ過機構が破綻してしまいます。この状態が糖尿病性腎症といわれるものです。

一般に糖尿病の発症から10年から20年後に発症することが多いようですが、個人差が大きく、急速に糖尿病性腎症になる人もみられれば、かなり血糖のコントロールが悪くても発症しない人もいます。初期の段階(早期腎症)では症状は無く、ごく軽度の蛋白尿(微量アルブミン尿)がみられるのみです。悪化するにしたがって尿中の蛋白量が増加していき、むくみや高血圧がみられることがあります。また、血液をろ過して尿をつくる腎臓の働きもしだいに低下し、腎不全にまで進展すると血液透析による治療が必要になります。近年、糖尿病性腎症から慢性腎不全に移行し、透析が必要となる患者さんの数が急増しています。

治療としては、厳格な血糖コントロール(ヘモグロビンA1cが6.5%未満)と血圧のコントロールが中心となり、病期によっては食事の蛋白制限を行うこともあります。初期の段階(早期腎症)までは前述の治療により前の状態に戻すことができますが、ある程度進行(顕性腎症期)すると「悪化させない」ことはできても「元に戻す」ことはできなくなってきます。従って、無症状の早期腎症の段階で糖尿病性腎症であることを見つける必要があります。糖尿病の患者さんは、糖尿病性腎症を早期に発見し、悪化しないようにコントロールするためにも定期的に糖尿病専門医へ受診し検査を受けることが重要です。

医師 中澤 哲也