インフルエンザ – 予防接種

1. 予防する疾患・感染症

「インフルエンザ」はインフルエンザウイルスによる感染症です。いわゆる通常の風邪(感冒)に比べると熱が高く、悪寒、全身倦怠感、頭痛、関節痛、筋肉痛などの全身症状が急激に発症し、重篤感が強いです。気道炎症状のみならず、嘔吐や下痢などの胃腸炎症状を伴う場合もあります。一般的に潜伏期間は1〜2日で、感染力は強く、体内でのウイルス量は感染後2〜4日でピークに達すると言われています。

特に乳幼児では急性脳症を起こすことがあり、場合によっては視覚や聴覚障害、知的障害などの後遺症を残します。高齢者や免疫力の低下している方ではインフルエンザそのものよりも、その後に細菌性肺炎を合併して死亡することも多いです。また、H1N1(下記参照)が流行した際に、妊婦が重症化した報告が相次いであったため、WHO(世界保健機関)は週数を問わず妊婦へのワクチン接種を勧めています。

シンガポールでも日本でも、以下のハイリスクグループの人たちと医療機関で働いている人たちへのワクチンの積極的接種が推奨されています。

  • 65歳以上の方
  • 乳幼児(生後6ヶ月から5歳未満)
  • 妊婦(全ての週数)
  • 慢性疾患に罹っている方(呼吸器疾患・心血管疾患・腎疾患・神経筋疾患・肝臓疾患・代謝疾患・血液疾患)
  • 免疫抑制状態の方
  • 長期療養施設の入所者

インフルエンザウイルスの抗原遺伝子は絶えず変異しており、また、ワクチンの効果は長くて6ヶ月程度なので、原則、毎年接種することが勧められます。前シーズンの流行状況からWHOがその年の流行ウイルス株を予測し、各国の該当機関に通達し、ワクチンの製造が始まります。

近年は、A型2株およびB型2株(A型、B型に関しては下記参照)、すなわち4つの異なる遺伝子タイプのインフルエンザに対応する4価ワクチンが世界的に製造され始め、当クリニックでも4価ワクチンを使用しています。

シンガポールは赤道直下に位置するため、北半球型と南半球型の2つのタイプのインフルエンザが流行する可能性があります。すなわち、日本や中国で流行する北半球型(10月から翌年4月)とオセアニアや南米で流行する南半球型(4月から9月)が、人の出入りによって運び込まれます。インフルエンザウイルスの生存には気温ではなく湿度が大きく関係していて、シンガポールのような湿度の高い国でインフルエンザが流行するのは、冷房環境による乾燥が主たる原因と言われています。

従って、シンガポールにおいては、小さなピークはあるものの、インフルエンザはほぼ一年中認められ、ワクチンも北半球型と南半球型の2タイプが用意されています。上記のターゲットとなる4株は、北半球型および南半球型のそれぞれについて予測され、年によってはそれらが同じこともあれば異なることもあります。通常は11月頃に北半球型を接種しておけば、翌年の春先の南半球型の流行ピークはカバーされると考えられますが、予測株が全く異なる場合や北半球型を接種しなかった場合は、4月頃に南半球型を接種することが勧められます。

2. 日本でもシンガポールでも任意接種

3. 接種時期および接種回数(シンガポールを含む世界的標準)

生後6ヶ月から接種可能(1歳未満での抗体獲得率は高くないので、家族全員がワクチンを接種し、家の中にインフルエンザを持ち込まないようにすることが大事です)。

3歳未満は成人の半量。

年齢 条件 接種回数
6ヶ月以上9歳未満 接種歴なし 初回と4週間後の2回
接種歴あり または 罹患歴あり 1回のみ
9歳以上

4. 接種方法

日本では皮下注射
シンガポールを含む他の国では筋肉注射。

5. 効果の持続期間

約6ヶ月間

6. その他

インフルエンザと言った場合、一般的には季節性インフルエンザのことを意味します。3種類あり、臨床的に問題となるのはA型とB型の2種類です。B型の方が症状は相対的に軽く、ヒトとアシカのみに感染するのに比べ、A型はヒト以外にもトリ、ウマ、ブタなどに感染するため、いわゆる「新型インフルエンザ」を派生させやすいと考えられています。

すなわち、A型インフルエンザウイルスは通常は決まった宿主にしか感染しませんが、時に大きく遺伝子変異を起こしてヒトへの感染性を獲得すると、人類が免疫を持っていないため世界的大流行(パンデミック)を起こします。このような大きな突然変異がいつ起こるかは全く予測ができず、世界各地でモニタリングが続けられています。2009年に流行した新型インフルエンザは、もともとブタに感染するインフルエンザウイルスがヒトに感染して広がったもので、H1N1と呼ばれています。「新型インフルエンザ」であっても、人類が免疫を獲得して大流行が終息すると、通常の季節性インフルエンザとみなされます。なお、「新型インフルエンザ」という呼び方は日本の法律上の用語です。

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