狂犬病 – 予防接種

1. 予防する疾患・感染症

狂犬病はその名の通り、犬が狂ったようになる病気です。狂犬病ウイルスに感染した犬は水を恐れるようになることから、「恐水病」とも呼ばれることもあります。一般的には感染動物に咬まれたり、引っ掻かれたり、傷口や粘膜を舐められたりすることで感染します。その咬み傷が数ミリでもうつる可能性はあります。

このウイルスは人を含むすべての哺乳類に感染しますが、人への感染源の90%以上がイヌと言われていて、人から人への感染はありません。その他、コウモリやキツネなどの野生動物からの感染も報告されています。罹患動物に噛まれた場合、その咬み傷の部位が脳に近いほど潜伏期間は短く、遠いと発症まで数ヶ月かかることもあり、発見が遅れます。咬傷から侵入した狂犬病ウイルスは神経系を介して脳神経組織に到達し、風邪に似た症状の後、異常感覚、恐水症状、麻痺、幻覚、精神錯乱などの症状が現れ、最後は昏睡し、呼吸停止となってほぼ100%死亡します。

理論上は狂犬病罹患動物がいなくなり、また、入って来なければ、患者の発生はなくなりますので、世界的には日本、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドなどの島国およびシンガポールやスカンジナビア半島は、狂犬病清浄地域に指定されています。シンガポールは、1953年を最後に患者の発生を認めていません。これには政府主導で飼い犬を登録制とし、すべての飼い犬にマイクロチップを埋め込んで狂犬病の予防接種を管理するようになったことによります。

一方、未だ世界の2/3の地域で患者の発生が認められ、年間約7万人が死亡しています。中でもインドは最も多く感染が報告されているほか、中国、東南アジアでも毎年かなりの数の犠牲者が出ていますので、シンガポール内で生活する分には不要ですが、これらの地域への出張・旅行者・転居者には、予防接種が強く勧められます(暴露前接種)。また、たとえワクチンが完了していても、狂犬病感染のリスクがある接触があった場合には、速やかにワクチン接種が必要となります(暴露後接種)。

さらに、暴露前接種が未実施または未完了の場合は、暴露後接種と併せて抗狂犬病抗体を打つという措置が推奨されます。しかしながら、狂犬病ワクチンは非常に高価であり、また、抗体も希少であるため、蔓延地域の医療機関にはこれらの製品がないことも多いのが現状です。

シンガポールでは組織培養ワクチンを採用していて、大きく分けてニワトリ胚細胞由来(Rabipur®)とベロ細胞由来(Verorab®)の二種類があります。現在、当クリニックではRabipur®という製品を取り扱っています。日本の国産狂犬病ワクチンはニワトリ胚細胞由来ですが、接種スケジュールは日本独特の方法であるため、途中まで打ってきた方は、医師にご相談ください。また、本製品は在庫切れになりやすいので、接種希望の方は事前にクリニックにお問い合わせください。

2. 日本でもシンガポールでも任意接種

3. 接種時期および接種回数(暴露前接種)

すべての年齢で接種可能。0日目、7日目、21日または28日目の合計3回接種。免疫持続が必要な方は、WHOの推奨方法では、最初の3回の1年後に1回追加接種。その後は5年毎に追加接種。

4. 接種方法

日本でもシンガポールでも筋肉注射

5. 効果の持続期間

約2年間(最初の3回で)

6. その他

狂犬病ウイルスは非常に弱いウイルスなので、噛まれたらまず直ちに傷口を石鹸で洗浄し、消毒液やエタノールで消毒し、速やかに医療機関に相談することが必須です。

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