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重症急性呼吸器症候群
Severe Acute Respiratory Syndrome(SARS)について
ラッフルズジャパニーズクリニック/ラッフルズホスピタル
永山憲市
SARSの臨床像(1)
潜伏期間:3日から14日
初診時、突然の高熱、筋肉痛、悪寒戦慄、空咳を訴える。
胸部X線検査:肺炎像。
血液検査:白血球数減少、血小板数減少、肝機能異常、強い炎症反応。
SARSの臨床像(2)
初診後、息切れ、呼吸困難感が出現、増強し肺炎症状が強まる。
初診後約7日で約80〜90%は症状が軽快する。
残りの約10〜20%の患者群は、重症ARDS(急性呼吸窮迫症候群)を起こして人工呼吸器の使用が必要となる。
SARSの臨床像(3)
重症群での死亡率は、患者が他の基礎疾患を有しているかどうかに関連している。
全体の死亡率は4%前後である。
予後指標:40歳以上で、他の基礎疾患(糖尿病、高血圧、心臓病など)を有する患者は重症化し易い。
SARSの臨床像(4)
治療:
1.
多くの抗菌剤、あるいは抗ウイルス剤が治療に用いられているが、効果は証明されていない。しかし、カナダ・香港からの報告から早期から 抗ウイルス剤(リバビリン)とステロイド大量投与を用いた治療を行うことで肺炎が改善できる可能性がある。
2.
重症患者における適切な呼吸管理(酸素投与、人工呼吸療法)を行い、合併してくる二次的な細菌性肺炎、深部真菌感染症、敗血症の治療を確実に行なうことが救命に最も重要。
SARSの臨床像(5)
効果が期待される治療法
香港からの報告では、順調な回復過程にある約20人の患者の血清を、重症患者に投与したところ、症状が大幅に改善したという。
シンガポールにおいても回復期患者の血清を重症患者に投与し経過観察中で、症状の改善を認めているが、重症患者の救命が可能かどうかは不明である。
SARSの原因ウイルスと考えられるコロナウイルス
一般的な風邪、胃腸炎の約50%がコロナウイルスの1種のヒトコロナウイルスによる。
遺伝子相同性よりSARSはコロナウイルスの1種であるマウス肝炎ウイルスによる可能性が高い。
なぜヒトに感染性を有するようになったか、なぜいきなり肺炎を引き起こすのかは不明。
SARSの感染力
患者の咳、くしゃみにより約3m拡散する。
乾燥した環境では約3時間生存する。
唾液、痰、鼻汁、便中に排泄される。
空気感染, 飛沫感染,
接触感染によって広がった可能性が高い。
SARSの感染経路
空気感染:トイレ、エレベーター等の密室、飛行機等の乗り物
飛沫感染:患者との密接な接触(医療従事者、患者の家族・友人)
接触感染:ドアノブ、エレベーターのボタン、トイレの便座、タオル、衣服
感染力を有する状態とは?
潜伏期間中はコロナウイルスを排出していない可能性が高い。
発熱している状態の発病患者のみが痰などにウイルスを排出している。
咳、くしゃみ、鼻水だけで発熱していない場合はSARS患者とは考えにくい。
予防方法
マスクの装着。湿ったら取り替える。 空気感染・飛沫感染防止。
外出中と外出後のうがいの励行。 空気感染・飛沫感染防止。
外出中、外出後と用便後の石鹸を用いた手洗いの励行。 接触感染防止。
使い捨て紙タオル、各人別のタオルを利用する。 接触感染防止。
外出後には帰宅してから衣服を変える。洗濯、衣服の交換は頻回に行う。
飛沫感染・接触感染防止。
ラッフルズジャパニーズクリニックとしての対応
発熱等の病状を有し、香港等への旅行歴がある方には胸部X線検査、血液検査を施行。至急に検査結果(1時間前後で)を検討・判断。この場合、来院まえに電話でご連絡を。
疑わしい患者様はより詳しい検査のためTan Tock Seng病院へ紹介いたします。その場合には救急車を手配いたします。
香港等から、あるいは他国から帰星され、発熱等の症状はないが、SARSが心配との方も胸部X線検査、血液検査を。
潜伏期間中も血液検査上に変化を認めることがあり、上記検査を。
シンガポール国外での患者発生時には日本へ帰国されての治療を。
日本での入院病院も含めご相談。
日本国内転送可能病院
山形県立中央病院 2床 山形県
成田赤十字病院 2床 千葉県
国立国際医療センター 4床 東京都
東京都立荏原病院 2床 東京都
東京都立墨東病院 2床 東京都
新潟市民病院 2床 新潟県
大津市民病院 2床 滋賀県
大阪市立総合医療センター 1床 大阪府
市立堺病院 1床 大阪府
市立泉佐野病院(泉佐野市立感染症センター) 2床 大阪府
神戸市立中央市民病院 2床 兵庫県
熊本市立熊本市民病院 2床 熊本県
福岡市立こども病院・感染症センター 2床 福岡県
WHOによる現状把握
ベトナム、シンガポールは封じ込め政策が成功しつつあるが、深刻な状況にあるのは香港・中国である。また、カナダ、米国にも拡大し、特にカナダでは重大な問題となっている。
日本は大丈夫か?
SARS流行と類似した過去の流行事例
1968年の香港カゼ(香港A型インフルエンザ)
中国広東省を起源として香港から全世界に拡大し、現在もA型インフルエンザ流行の主要なウイルス型。
ウイルスはアヒルからブタへ、ブタからヒトへと伝播した。
流行終息後もアジアを中心に世界中に定着し、現在も散発的な流行を繰り返している。
ワクチン、予防薬、治療薬の開発によりインフルエンザ流行を抑制、重症化を食い止めることができるようになった。
SARS対策の今後の展望
徹底した封じ込め:感染源のシャットダウン
院内感染予防の徹底
輸入感染防止の徹底
個人による予防策の徹底
患者の早期発見、早期治療、早期伝播遮断
治療薬、予防薬、ワクチンの開発には時間がかかる。 |